2009年7月アーカイブ

 

ドバイの魅力はなんなのだろう?

 

私が初めてブルジュ・ハリファ(旧名ブルジュ・ドバイ)の映像を見た時は、アラブの遠い国で想像を超えるようなことをやっている・・程度のイメージだった。国の名前すら記憶になかった。しかし、「世界一」に溢れるドバイの情報やニュースを耳にするにつれドバイに興味を持ち、そしてもっとドバイを知ると、隠された面白さに気づく。
 

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そもそもドバイは、世界から注目されるはずもない国だった。


だいいちドバイは国ではなく、アラブ首長国連邦(AUE)の一つの首長国に過ぎず、

いってみれば「UAE国のドバイ州」みたいなもんである。

しかもUAE最大の「州」でもないんです。

産油量はUAE最大のアブダビと比べたら、その10分の1にも満たない。

UAEとなってからの歴史だって数十年ほど。日本の歴史と比べたら、まだ一瞬に過ぎない。

 


そんなドバイも、ある事に気がついた。

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「あ、石油が無くなりそうじゃん。おめーら早く言えよ(怒)」

と首長シェイク・モハメッド氏が部下に言ったかどうかは不明だが、

石油が無くなった後の近い将来を支えるべく、様々な手段に打って出た。



詳しくは激変のドバイをご覧いただければわかるが、

近代都市を「かなり無理やり」とも言うほど急速に作っていった。

その激しさときたら。「世界一」の看板がくっついた建造物が竹のようにニョキニョキ生まれてゆく。

 

こうして出来上がった、人工の国ドバイ
人と金と注目を集める目的は大成功したと言ってよいだろう。
(借金もたくさん作っちゃいましたが)
 

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・・・・しかし、である。

 

単なる「世界一がいっぱいの、豪華都市」というイメージはドバイの本質じゃない

ちょっと視点を変えてみると、ドバイの面白さがより見えてくる。

 

ドバイは歴史も浅く、文化や産業も他国と比べると規模の小さいものである。

さらに国土の殆どが「砂漠」で覆われており、観光地も何もあったもんじゃない。

しかも夏は気温50度に達し(オイ)、5分と外に立っていられない

わざわざ海外から遊びにくる理由が見当たらない。

 

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要は、人を呼ぶにはあまりにも観光資源に乏しいのである。

 

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「観光地が無いなら作っちゃえ」 

と首長シェイク・モハメッド氏(再登場)が言ったかどうかは不明だが、

もともと何も無いなら、人工的に観光スポットを作る、という戦略は納得のいくシナリオ。

 

そこで、おなじみ世界一だらけの観光スポットをつくりはじめた。

 

さらには人工的に「自然」を作るという、行為自体が矛盾するようなプロジェクトも動き出す。

たとえば巨大人工島ザ・パーム、上空からしか認識できない世界地図のような人工島郡ザ・ワールドは、数兆円規模の予算で進めている、自然を造成する超巨大プロジェクトである。これも人を世界中から呼び寄せるためである。ちなみに計画は白紙になってしまったが、一時は「まるごと海の中にある、海中ホテル」も計画していた。(このホテル、実現して欲しかった・・)
そもそも砂漠気候のドバイに、緑が生い茂ってる今の状態こそ、まさに「人工的な自然」状態。

 

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さらに、自然を改造することで

海の上に立つホテル
「猛暑の国に作ったスキー場」

「砂漠にある世界最大のアミューズメント施設」(建築中)
「砂漠にうまった競技場」(計画段階)
「世界最大のウォーターフロント」(計画段階)

などなど、自然を凌駕しまくりの夢のようなプロジェクト目白おし。

これだけ話題を作れば、私みたいにドバイに行きたくなる人が増えるのは当たり前。

空港の利用客も6倍に増えて、今や成田と同じ規模の人が行き交う。

 

 

ただですね、忘れちゃいけないのは、このようなプロジェクトを進行できるのは

ドバイが現時点でまだ石油の恩恵に授かっているからなんである。

つまりオイルマネーの信用があるからこそ、世界中から資金を集め、

このようなプロジェクトを組むことが出来ちゃうのである。

 

このようにドバイは


「人工的」という自然からもっとも離れたところで生き残ろうとしていながら、

もっとも自然(石油)に頼って生きている国なのだ。

 

自然から遠いようで近い。

人工的な都市に見えながら、自然に頼って出来た国。

 

こんな矛盾だらけの国だから、ドバイは面白い。

欲望と繁栄の都市ラスベガス

人間の欲望と技術がどれだけ「すさまじい」ものか、初めて体験したのは、カジノで有名なラスベガスに行った時だった。

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ご存知の通りラスベガスはカジノで有名だが、何故ここでカジノが発展しているのかと言うと、一つの理由は税金の安さ。ラスベガスのあるネバダ州は 個人所得税・法人税が無く、他の税金もかなり低いので、大企業にとって魅力的な土地なのだ。そして二つ目にネバダ州はカジノが合法であるということ。囲ま れる州は全て賭博が禁止されているので、州境にカジノを設置することで、集客が見込める。そして最後に、カジノは儲かる、という一番の理由も忘れてはいけ ない。

カジノに人を呼ぶため、テーマホテルと呼ばれるカジノ付ホテルが増え、「遊園地」や「巨大ショッピングモール」「シアター」「世界一巨大な噴水」 「ピラミッド」「凱旋門やエッフェル塔(本物の半分の高さ。当初は実物大の予定だったが、空港に近いという理由で小さくしたらしい)」というおまけを作って客を集めるのである。他にもセリーヌ・ディオンやエルトン・ジョンなど 世界的なシンガーやシルク・ドゥ・ソレイユのサーカスと年間契約して独り占めしたり、ミュージカルも開催しちゃったりと、そのスケールもアイデアもハンパ ではない。もちろんフレッシュな食材で贅沢なバッフェを格安で提供し、「食」でもウリを作る。

そして、これらの贅沢な仕掛けは全て、「カジノをやってもらうため」の客寄せ、なのである。

そもそもホテル自体がおまけとも言える。少しでも多くの人を呼んでカジノをしてもらうため、部屋代も相場の半分ほどに設定しているところもある。


この贅沢さがラスベガスのシンボルでもあるが、 一つ忘れてはいけないのは、ラスベガスが




     砂漠のど真ん中にある




ということ。

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海も山も無い、資源に乏しく、特別な産業も無かった場所である。私はロス方面から車でラスベガスへ移動したことがあるのだが、途中では地平線が見えるほど広くて何も無い「砂漠」。(といっても砂丘のある砂漠ではなく、だだっぴろい平らな土地に時折見える茂みだけ・・という感じ。幾ら移動しても景色 は変わらない)
その何もない砂漠を車でずーーーーーーーーっと移動すると、ようやく見えてくるのが、世界12大ホテルのうち11軒が名前を連ね24時間眠らない贅を尽くした娯楽都市ラスベガスなのである。


要は、言ってしまうと、人間の都合で、砂漠の「ど真ん中」に、世界で最も贅を尽くした都市が出来てしまったのである。(自然環境の観点で見れば、そんな不便な土地にわざわざ作る必要は無い)

もともと砂漠で何にも無い訳だから、そこに巨大ホテルを建てるため莫大な量の資材を長い長い砂漠を越えて運び、気が遠くなるような労力をかけ建築するのである。また街として機能させる ための、電力や水の供給。さらには高級レストランへフレッシュな食べ物を毎日砂漠を越えて運ばなくてはいけない。海や畑が隣にある訳じゃないんですよ。 ぜーーんぶ、砂漠を通って運ばなくちゃいけないんである。

しかし、カジノが合法で、州の境界という理由だけで、こんな不便で暑い場所に、世界中から人が来たくてしょうがないような都市を作ってしまった。 私はこんな、自然摂理と矛盾し、人間の都合で出来てしまった砂漠都市に、ある種のロマンを感じてしまい、心の中でずっとラスベガスは特別な存在だった。





そこに出現したのが、ドバイである。

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自分の中で、人類の繁栄と欲望の象徴だったラスベガスを、ドバイはあっけなく凌駕してしまった。
どちらも砂漠の都市。ドバイはしかも砂丘でラクダのいる国。温度は50度を超える事もある。
人類の欲と技術の果ては、なぜか生活の困難な砂漠地域に行き着く。
そんな矛盾も、またロマンの一つだ。

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