ドバイの魅力はなんなのだろう?
私が初めてブルジュ・ハリファ(旧名ブルジュ・ドバイ)の映像を見た時は、アラブの遠い国で想像を超えるようなことをやっている・・程度のイメージだった。国の名前すら記憶になかった。しかし、「世界一」に溢れるドバイの情報やニュースを耳にするにつれドバイに興味を持ち、そしてもっとドバイを知ると、隠された面白さに気づく。
そもそもドバイは、世界から注目されるはずもない国だった。
だいいちドバイは国ではなく、アラブ首長国連邦(AUE)の一つの首長国に過ぎず、
いってみれば「UAE国のドバイ州」みたいなもんである。
しかもUAE最大の「州」でもないんです。
産油量はUAE最大のアブダビと比べたら、その10分の1にも満たない。
UAEとなってからの歴史だって数十年ほど。日本の歴史と比べたら、まだ一瞬に過ぎない。
そんなドバイも、ある事に気がついた。
「あ、石油が無くなりそうじゃん。おめーら早く言えよ(怒)」
と首長シェイク・モハメッド氏が部下に言ったかどうかは不明だが、
石油が無くなった後の近い将来を支えるべく、様々な手段に打って出た。
詳しくは激変のドバイをご覧いただければわかるが、
近代都市を「かなり無理やり」とも言うほど急速に作っていった。
その激しさときたら。「世界一」の看板がくっついた建造物が竹のようにニョキニョキ生まれてゆく。
こうして出来上がった、人工の国ドバイ。
人と金と注目を集める目的は大成功したと言ってよいだろう。
(借金もたくさん作っちゃいましたが)
・・・・しかし、である。
単なる「世界一がいっぱいの、豪華都市」というイメージはドバイの本質じゃない。
ちょっと視点を変えてみると、ドバイの面白さがより見えてくる。
ドバイは歴史も浅く、文化や産業も他国と比べると規模の小さいものである。
さらに国土の殆どが「砂漠」で覆われており、観光地も何もあったもんじゃない。
しかも夏は気温50度に達し(オイ)、5分と外に立っていられない。
わざわざ海外から遊びにくる理由が見当たらない。
要は、人を呼ぶにはあまりにも観光資源に乏しいのである。
「観光地が無いなら作っちゃえ」
と首長シェイク・モハメッド氏(再登場)が言ったかどうかは不明だが、
もともと何も無いなら、人工的に観光スポットを作る、という戦略は納得のいくシナリオ。
そこで、おなじみ世界一だらけの観光スポットをつくりはじめた。
さらには人工的に「自然」を作るという、行為自体が矛盾するようなプロジェクトも動き出す。
たとえば巨大人工島のザ・パーム、上空からしか認識できない世界地図のような人工島郡ザ・ワールドは、数兆円規模の予算で進めている、自然を造成する超巨大プロジェクトである。これも人を世界中から呼び寄せるためである。ちなみに計画は白紙になってしまったが、一時は「まるごと海の中にある、海中ホテル」も計画していた。(このホテル、実現して欲しかった・・)
そもそも砂漠気候のドバイに、緑が生い茂ってる今の状態こそ、まさに「人工的な自然」状態。
さらに、自然を改造することで
「海の上に立つホテル」
「猛暑の国に作ったスキー場」
「砂漠にある世界最大のアミューズメント施設」(建築中)
「砂漠にうまった競技場」(計画段階)
「世界最大のウォーターフロント」(計画段階)
などなど、自然を凌駕しまくりの夢のようなプロジェクト目白おし。
これだけ話題を作れば、私みたいにドバイに行きたくなる人が増えるのは当たり前。
空港の利用客も6倍に増えて、今や成田と同じ規模の人が行き交う。
ただですね、忘れちゃいけないのは、このようなプロジェクトを進行できるのは
ドバイが現時点でまだ石油の恩恵に授かっているからなんである。
つまりオイルマネーの信用があるからこそ、世界中から資金を集め、
このようなプロジェクトを組むことが出来ちゃうのである。
このようにドバイは
「人工的」という自然からもっとも離れたところで生き残ろうとしていながら、
もっとも自然(石油)に頼って生きている国なのだ。
自然から遠いようで近い。
人工的な都市に見えながら、自然に頼って出来た国。
こんな矛盾だらけの国だから、ドバイは面白い。